セダム緑化から環境適応性の高いキリンソウ類による緑化へ!
使用植物
常緑性のタケシマキリンソウ、半常緑性のエゾノキリンソウ、落葉性のキリンソウやホソバノキリンソウ等を使用します。 キリンソウ類は環境適応性に優れているため、無灌水の薄層基盤でも生育が可能です。 (写真は施工後7年目の屋根緑化) |
セダム類は花が咲いたり、繁茂しすぎると衰退しますが、キリンソウ類は開花後も元気に生育します。 エゾノキリンソウは越冬芽が赤くなる半常緑性で、古い茎を木質化させます。 |
キリンソウ類には常緑性、落葉性、株型、匍匐型などの色々な種類があります。 写真は国内外のキリンソウ類を物置の上で生育の検討を行っているところです。 冷涼地に自生する種類を暖地で栽培することにより、耐暑性や耐乾性が高い系統を選抜し、過酷な生育環境である屋上でも生育できる植物を見出すためです。 |
① タケシマキリンソウ(常緑性、直立~匍匐性、斑入り種等) | ||
キリンソウは地上部が枯死し、休眠芽で冬越ししますが、タケシマキリンソは秋に出芽した個体が越冬するため、冬でも緑(常緑)です。 タケシマキリンソウは海岸や山地の岩場に生える自生種で、自由に栽培できるため、登録品種よりも安価に導入することができます。 |
従来のキリンソウは毎年冬期に地上部が枯死しますが、タケシマキリンソの根元は太く木質化します。 地上部の太った茎から新芽を出すことは、木本類(樹木)のような性質と言えます。 |
タケシマキリンソウは他家受粉種であるため、チョウやハチが訪れ、種内雑種が生じやすくなります。 そのため、多様な形状を持つ系統や耐暑性の高い系統等が生じていると考えられます。 |
② エゾノキリンソウ(半常緑性、横張~匍匐性) | ||
エゾノキリンソウは、名前の通りに北海道原産で、耐暑性に劣る種類が多いですが、内地で純化された系統は比較的耐暑性に優れています。 写真のエゾノキリンソウ(オウミエゾ3号)は生育が旺盛で、地下匍匐茎を伸ばして大きな株に生長します。 |
エゾノキリンソウには葉が細く秋に黄葉する系統や葉が丸く紅葉する系統(オウミエゾ3号)等があり、赤い越冬芽の期間が短く、2月には緑の新芽が生育を始めます。 |
エゾノキリンソウは草丈が低く密生するため、背の高いキリンソウ類と組み合わせば、植被率を高められることが期待できます。 ただ、エゾノキリンソウは耐暑性が低く、夏期の長期の干ばつには耐えられません。 |
③ キリンソウ(落葉性、直立~横張性等) | ||
(キリンソウ) | (テカリダケキリンソウ) | (カンザシキリンソウ) |
キリンソウ類の葉は秋期に黄化して落葉する種類が多いですが、北海道や山岳産の系統はきれいに紅葉する種類もあります。落葉性のキリンソウは高温時の生育に優れているため、常緑種と組み合わせて使用すれば、より多様な緑化が実現できます。 | 南アルプスの光岳(テカリダケ)に自生するキリンソウの地域種であるが、草丈が低くコンパクトなサイズであるため園芸種として販売されています。 | 香川県の小豆島(寒霞渓)に自生する地域種で、葯の色や葉の形に特徴があります。 キリンソウは地域による変異が多く、秋に茎に無性芽(ムカゴ)を付けるコモチキリンソウ(富山県産)などもあるそうです。 |
④ その他のキリンソウ属の植物(落葉性、直立~横張性等) | ||
(ホソバノキリンソウ) | (ヒメキリンソウ) | (ハコダテキリンソウ) |
中部以北の湿潤な草原に自生する直立性の種類で、耐乾性や耐暑性はキリンソウに劣ります。 写真は温暖地で永年栽培されていた系統で、耐暑性に優れているため、多様な緑化が求められる現場で使用の予定です。 |
四国の石灰岩の岩場に自生する希少種(絶滅危惧1B類)で、葉が丸く対生する特徴があります。(写真はHPより) 韓国江原道の太白山等の石灰岩地帯にも葉が対生する太白キリンソウが自生しており、ヒメキリンソウの近縁種であると考えられます。 |
北海道の南部や青森県に自生するキリンソウ類で、エゾノキリンソウとの交雑種とされ、性状も両者の中間です。 |
⑤ セダム属の植物(常緑~落葉性、匍匐性) | ||
(メキシコマンネングサ) | (タイトゴメ) | (タカネマンネングサ) |
常緑性で生育の旺盛な種類(帰化種)であるが、開花した茎が枯れる欠点があるため、開花しても枯れ難い種類を検討中です。 | 海岸などに自生する在来のセダム類であり、常緑であるが冬期には一部が赤く紅葉します。 多様な品種があり、生育の旺盛な系統はキリンソウを被圧する場合があります。 |
中四国、九州に自生するセダム類で、南向きの岩場に生息するため、屋上緑化用の植物として検討を行いました。 結果は、夏期の衰退が激しく、一般に利用されているセダム類よりも耐暑性の高い種類は見い出せていません。 |